即興ダンスの素晴らしさとコツ
即興で踊られるダンス。その素晴らしさ、奥の深さについてお話します。
即興ダンスに興味がある、トライしたい、という方は多く、また、同じくらい苦手な方がいらっしゃいます。
元々、オリエンタルダンス(=現在の広く意識されているベリーダンス)は、即興ソロで躍るものでした。
それが、ショーカテゴライズされ、群舞や振付という概念が生まれてきたものに過ぎません。
ベリーダンスに限らず、即興ダンスは、何より「音に乗る」「音楽の具現化にトライする」という世界を、ライブ感満載で、スリリングに楽しむもの。
と同時に、ダンサーは自分の中の引き出しを一つずつ開けて慈しみ、音の中に溶け込みながら、その場で見てくださっている方にも「音楽=ストーリー」を伝えるという重要な役割も担います。
見ているお客様に、即興ダンスだと悟られないとクールですね。
群舞や振付がある場合は、踊りながら「すべきこと」が多いため、なかなか音に乗る感覚を捉えるのは難しいことです。
振付やフォーメーションを体が覚えるまで、しっかりと躍り込まないと「えと、次の振り!次の振り!」と、頭で考えがちで、肝心の曲があまり聞けていない場合も多いです。
また、ダンスを始めてからまだ日が浅いと、体が思うように動かせず、自分の中にコンビネーションのストックがない・あってもスムーズに出せない、という問題でうまく表現できないかもしれません。
中東の音楽は、独特のリズム、声によるアクセントも多彩で、本当に美しいものです。
伝統的な曲も、現代風にアレンジしてある曲も、ドラムの独特なリズムが入るだけで、そこはもうミドルイースタンの世界。
音楽をどう取るか、リズムを取るのか、メロディーラインを取るのか、独特のアクセントを取るのか。
どの取り方をしても自由です。
私は、これで即興を踊ろう!と決めたら、曲を聞き込み、音を、リズムを、体にまず入れます。
そして、曲の構成を把握します。多くは、起・承・転・結のストーリーになっていると思います。
1曲の中にも、表情が切り替わる瞬間があり、1回目よりも2回目はドラマチックに、繰り返し部分は気持ちを反芻して味わうように、繋ぎの部分はお客様と向き合うように、などの設計をしていきます。ステージの広さなども加味し、移動をどこでするかも考えておかなければいけません。
とはいえ、音楽にまかせて溢れ出す動きは、どうしてかベリーダンスのムーブメントや、これまでに何度も使ったコンビネーションが出てしまいます。体に染み付いてしまっているんですね。
インプット(曲に向き合うこと)に対してはロジカルですが、アウトプット(体から溢れる動き)はナチュラル重視。
この二面性を大切にしてこそ、ライブ感が出て素晴らしいものになると思っています。
こう見ると、振り付けが存在する方が、思考せずに踊れているとわかると思います。
即興は、まさにその場所で思考しながら身体で表現する、一貫性を試されるもの と同時に、ダンサー本人が誰よりも一番、この状況を楽しんでいること。それがお客様にも伝わり、楽しんでいただけるもの、だと思います。
発表会やイベントでは、日頃のレッスンの成果を発揮する場ですので、やはり群舞が多くなります。
群舞は群舞で、本当に素晴らしく、大変愛していますが、多くの場合、習っていても即興ダンスをする機会はあまり多くありません。
が、全員参加のディスコタイムなど、即興ダンスのチャンスがある場合もあります。
その時は、ぜひ体から溢れ出すものを豊かに感じて表現してみてください。即興でも、振り付けでも、踊っている本人が楽しい!と感じられるダンスが一番輝いているのですから。
それでも、「即興でまともに見えるダンスが踊れるようになりたい!でも、できない!」と悩む方におすすめの方法があります。
- 大好きな音楽で、かつ振り付けがついていない曲を、時間が有る限り聴き込む。
- どこかで「素敵だな」と思ったムーブメントの資料をストック記録しておき、ご自分の先生に「どうしてこうなるのか、どうなっているのか」を、解説してもらい、出来るようにしてもらうこと。
- コンビネーションを作ってもらうか、自分で好きな組み合わせのコンビネーションを作って、踊り込んでおくこと。
以上3つにトライして欲しいと思います。
全てが大切ですが、特に重要なのは、1です。それは、あなただけの感覚・感性は、誰にも作ることができないから。
2と3は、引き出しを増やすということですね。
引き出しは多い方がいいです。3段1列の引き出しを繰り返し開けるのが嫌なら、5段10列の引き出しにグレードアップするしかありません。意識と努力で、引き出しは増やせますよ。
ただ、引き出しを開けるのは1の「自分の感性」という指揮者がいてこそ。
どの順番で開けるのか。どれを開けるのか。同時に開けるのか。などのデザインをするのは、感性であり、ダンサーの個性がそこで生きてきます。
結局のところ、努力と経験で作られるものであり、決してその場で適当に作られたものではないのです。
でも、努力と経験を積めば、必ずどなたにも出来るようになると思います。
私のレストランショーは、デュオ以外は全て即興です。(個人的には単純に楽しんでいます)
2と3のお手伝いは、プライベートレッスンで行っております。もしご興味あれば、ご依頼下さいね。